渓流釣りを始めたとき、最初に買ったウェーダーが底面フェルトソールでした。
「フェルトソールなら滑らない」と聞いていたので安心して川に入ったら、苔の上でものすごく滑って転倒。腰まで濡れました。フェルトソールは乾いた岩には強いけど、苔がついた岩では思ったより滑る。これを知っていたら最初からラジアルソールとの2足体制を考えていた。
あのときのことは今でもよく覚えています。丹沢の渓流で、足元の岩が朝の光でうっすら濡れて光っていて、見た目には全然危なそうじゃなかった。むしろ「きれいな川だなあ」なんて呑気に思っていた。ところが一歩踏み出した瞬間、足の裏がスーッと横に流れて、踏ん張る間もなく尻もちをついて、そのまま冷たい水に腰まで沈んだ。春先の水は刺すように冷たくて、息が止まりました。ロッドを離さなかったのだけは我ながらえらかったけど、ウェーダーの中まで水が入ってきて、その日はもう釣りどころじゃなかった。濡れた服を引きずりながら車まで戻る道のりが、やたら長く感じたのを覚えています。
恥ずかしながら、おれはそのとき初めて「ソールには種類があって、川の状態で使い分けるものなんだ」と身体で理解しました。本やネットで読んで「知っている」つもりだったことと、実際に転んで冷たい思いをして「わかる」ことは、まるで別物でした。だからこの記事は、昔のおれみたいに「フェルトなら大丈夫でしょ」と軽く考えている人に向けて、まぁ偉そうなことは言えないんですけど、最初の一着でつまずかないための話としてまとめています。
ウェーダーの選び方
素材で選ぶ
| 素材 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ネオプレン | 保温性が高い。重い | 冬〜早春の本格派 |
| 透湿防水(ゴアテックス等) | 蒸れにくく快適。高価 | 夏の渓流・長時間使用 |
| ナイロン(非透湿) | 安い。蒸れる | 春〜秋の試し使い・入門 |
初心者にはまずナイロン素材の安いもので試すのがおすすめです。ウェーダーは自分に合うかどうか使ってみないとわからない。最初から高価な透湿ウェーダーに投資するより、数シーズン試してから本格的なものに移行するほうが失敗が少ないです。
なんでこんなことを言うかというと、ウェーダーって「合う合わない」が想像以上に個人差があるんですよね。身長や脚の長さ、太ももの太さ、足のサイズ。これが一つでもズレると、歩くたびに股の生地がつっぱったり、逆にダボついて水中で足にまとわりついたりする。試着できれば一番いいんですけど、ネットで買うことも多いし、結局は何シーズンか履いてみて初めて「自分はこのくらいのゆとりが好きなんだな」とわかってくる。だったら最初の一着でいきなり高いものを買って「思ってたのと違った」となるより、安いナイロンで一通りの感覚を掴んでから、二着目で本気のやつを選ぶ方が、おれは納得して買える気がします。
それと素材ごとの「蒸れ」の差も、これも履いてみないとピンと来ないところです。ナイロンの非透湿は、要は雨ガッパを履いて川に立っているようなもので、夏場に半日も入っていると内側が自分の汗でじっとり湿る。透湿防水のゴアテックスなんかは、この汗の水蒸気を外に逃がしてくれるから、長時間でも内側がさらっとしている。値段が倍以上違うので最初は「そんなに変わるの?」と半信半疑だったんですけど、夏の渓流を長く歩く人ほど、この快適さの差が効いてきます。逆に、春先や晩秋の数時間だけ、しかも年に数回しか川に入らないなら、ナイロンで十分というのも本音です。自分がどういう使い方をするか、まずそこを安いやつで見極めるのがいいと思います。
ソールで選ぶ
| ソール | 向いている場所 |
|---|---|
| フェルト | 乾いた岩・コケが少ない渓流 |
| ラジアル(ゴム) | ぬるぬるした岩・苔の多い渓流 |
| スパイク付き | 険しい岩盤・急斜面 |
渓流によって得意不得意があるので、行く川の特性に合わせて選んでください。
迷ったらラジアルかスパイク付きが汎用性高め。フェルトは「乾いた岩場専用」と割り切って使っています。
ここはおれが一番痛い目を見たところなので、もう少し細かく書いておきます。フェルトソールは、フェルト=毛氈みたいな繊維が水を吸って岩の微細な凹凸に食いつく仕組みなんですが、これがよく効くのは岩の表面が「ザラついた素の状態」のとき。問題は、苔やヌメリがその凹凸を埋めてツルツルにしてしまったとき。こうなるとフェルトの繊維が引っかかる相手を失って、まるでスケートみたいに滑ります。おれが転んだのもまさにこのパターンで、見た目はただ濡れているだけに見えた岩に、薄い苔の膜がべったり乗っていた。
逆にラジアルソールは、車のタイヤと同じゴムの溝で水を逃がしながらグリップするので、ヌメった岩や苔の多い渓流ではフェルトよりずっと安心感があります。万能ではないんですけど、「どんな川か事前にわからない」ときの一足としては、おれはラジアルを基準に考えるようになりました。スパイク付きは、ラジアルの底に金属ピンが打ってあるやつで、これは険しい岩盤や急斜面をよじ登るような本格的な渓ではめちゃくちゃ頼りになる。ただピンがある分、平らな河原や濡れた木の上ではかえってカチャカチャ滑ることもあるので、行く場所を選びます。
結局のところ、ソール選びは「自分が入る川がどういう足場か」を想像できるかどうかなんですよね。コンクリの護岸が多い里川なのか、苔むした岩がゴロゴロした源流域なのか。わからないうちは、ラジアルで様子を見て、慣れてきたら川ごとに履き替える二足体制を考える。おれはこの順番で痛い思いをせずに済むと思っています。
渓流タックルの基本
ロッド
渓流ルアーであれば4〜5フィート前後のUL(ウルトラライト)〜Lパワーが定番です。短い竿は木が多い渓流でキャストしやすい。
なぜ短い竿がいいのか、最初はおれもピンと来ていませんでした。海でルアーをやっていた頃の感覚で「長いほど飛ぶし有利だろう」と思っていたんですけど、渓流は事情がまったく逆でした。頭上に枝が覆いかぶさり、両岸の藪が迫って、まともに振りかぶれる空間なんてほとんどない。長い竿だとティップがすぐ枝に引っかかって、キャストする前にイライラする。短いULロッドなら、肘を畳んで手首だけでヒョイと送り込むようなキャストができて、狭いポイントにもルアーを通せる。実際に源流域に分け入ってみて、ようやく「短さは弱点じゃなくて武器なんだ」と腑に落ちました。
渓流ベイト(フィネスベイト)も最近は人気があります。バックラッシュしにくいタイプが渓流初心者には扱いやすい。ベイトの良さは、軽いルアーをピンポイントに「置きにいく」ようなキャストがしやすいところ。スピニングだとどうしてもラインが余分に出てしまう場面でも、ベイトは親指のサミングで距離を細かく調整できる。ただ、最初の一本としては、トラブルの少ないスピニングのULロッドから入る方が無難だと思います。バックラッシュの直し方を覚えるより先に、まず魚を掛ける楽しさを味わってほしい。おれ自身、スピニングである程度キャストに慣れてからベイトに手を出したクチで、その順番で正解だったと思っています。
ルアー
渓流で使うルアーは大きく3種類。
- スプーン: 王道。沈みが速く深場を探れる
- スピナー: 動きで反射食いを誘う。初心者にも使いやすい
- ミノー: 流れに乗せて漂わすアクションが得意
最初はスプーンとスピナーを数個ずつ持っていくと試せます。色はシルバー・ゴールド・オレンジが入れば大体対応できます。
この3種類、それぞれ「得意な状況」が違うんですよね。スプーンは薄い金属の板なので水を切って速く沈む。だから流れの速い瀬の中や、ちょっと深い淵の底を探りたいときに頼りになる。ただ、ただ巻くだけだと棒みたいに泳いでくるので、ロッドをちょいちょいあおって不規則に動かしてやると、ヒラッと反転した瞬間に食ってくることが多い。スピナーは、前についた金属のブレードが回転して水を押すので、巻いているだけで勝手にアピールしてくれる。「とりあえず投げて巻く」で魚が反応してくれるから、おれも始めたばかりの頃はこれに何度も助けられました。ミノーは小魚を模した形で、流れに乗せてフワフワ漂わせる釣り方が肝。これは少し操作が難しくて、慣れないうちは流れに負けて勝手に浮いてきてしまう。だから最初の数回は、スプーンとスピナーで「掛ける感覚」を掴んでから、ミノーに手を広げるのがいいと思います。
色については、おれは深く考えすぎないようにしています。水がクリアで日が差している日はシルバー、曇りや笹濁りで光が弱い日はゴールド、それでも反応がなければオレンジで派手にアピール。この3色が箱に入っていれば、たいていの状況で「次はこれを試そう」という手が残る。それより大事なのは、渓流は根掛かりやライントラブルでルアーをよく失うので、お気に入りのカラーは必ず複数ストックしておくこと。一個しか持っていないルアーで釣れて、次のキャストで岩に持っていかれたときの「あーあ」という気持ちは、一度味わうと忘れません。
ライン
ナイロン4〜6lbが渓流の入門には使いやすいです。フロロカーボンは根ずれに強いが、やや扱いにくい。
ライン選びは正直、最初は深く悩まなくていいと思っています。ナイロンは適度に伸びるので、急に魚が突っ込んでもその伸びが衝撃を吸収してくれて、強引なやり取りでも切れにくい。しなやかで巻きグセもつきにくいから、扱いやすさで言えば入門には一番です。フロロカーボンは、岩や枝にこすれる根ずれに強くて、水中で見えにくいという利点もあるんですが、ナイロンより硬くて、リールから出るときにバラけやすかったり、結び目が緩みやすかったりする。この「ちょっとした扱いにくさ」が、慣れないうちはトラブルの種になりがちなので、おれは最初はナイロンでいいと思っています。
PEラインは渓流でも使えますが、岩場でのラインダメージに注意が必要です。PEは細くても強くて感度も抜群なんですけど、引っ張る力には強い反面、岩の角でこすれる「擦れ」にはめっぽう弱い。渓流は岩だらけなので、知らないうちに角でガリッとやって、いざ魚が掛かった瞬間にスパッと切れる、なんてこともある。使うならリーダー(先端に結ぶフロロの糸)を必ず付けて、こまめにラインの傷をチェックする習慣が要ります。そこまでやれる余裕が出てきてからで十分。まずはナイロンで、ラインのことを気にしすぎず魚と向き合う。それが遠回りに見えて一番の近道だと、おれは自分の失敗から思っています。
渓流釣りで最初にやりがちな失敗
- 川の真ん中を歩く: 魚が逃げる。岸沿いをそっと近づくのが基本
- 遡行方向を間違える: 基本は川上に向かって上流へ遡る
- 帽子なしで行く: 枝ハリが飛んでくることがある。ファッションではなく安全のため
- 熊のいる地域でベルを忘れる: 東北・北海道はもちろん、中部・関西の山間も注意
このあたりは、どれも一回はやらかしたことがあるので、もう少し補足します。「川の真ん中を歩く」は、本当に最初の頃やりがちでした。早く釣りたい一心で、ジャブジャブ水の中を進んで、そのたびに上流に向かって泥や波紋を送り込んでいた。渓流魚は警戒心が強くて、足音や水の濁り、岸からのぞき込む人影に敏感です。おれが歩き方を変えて、岸際を腰を低くしてそっと近づくようにしてからは、明らかに反応が良くなった。釣れないのを道具のせいにする前に、まず自分の近づき方を疑ってみてほしいです。
「遡行方向」も地味に大事で、上流に向かって釣り上がるのが基本です。理由は、魚はたいてい流れてくるエサを待って上流を向いているから。背中側からそっと近づける上流方向の方が、魚に気づかれにくい。下流に向かって下りながら釣ると、自分の姿や濁りが先に魚に届いてしまって、ことごとく逃げられます。
帽子と熊鈴は、釣果じゃなくて安全の話。藪の中でルアーを外そうと屈んだ拍子に、跳ね返った枝が顔に飛んでくることがあって、つばのある帽子に何度か助けられました。熊鈴は、山に入る以上はお守りとして必ず付けています。チリンチリンという音がうるさく感じる日もあるけど、静かすぎる沢でばったり、なんてことだけは避けたい。まぁ、楽しけりゃいいよね、というのがおれのスタンスだけど、その「楽しい」を守るための最低限の備えは、ケチらない方がいいです。
よくある質問
Q. フェルトソールとラジアルソール、どちらが初心者向きですか?
おれの経験ではラジアルの方が汎用性が高いと思います。フェルトは乾いた岩に強いですが、苔がついた岩では思ったより滑ります。最初に買うならラジアルかスパイク付きが無難。フェルトは「乾いた岩場専用」と割り切るほうがいいです。
Q. ウェーダーは最初から高いものを買うべきですか?
最初は安いナイロン素材で試すことをおすすめします。ウェーダーは自分に合うかどうか使ってみないとわからない。数シーズン試してから透湿防水の本格的なものに移行する方が失敗が少ないです。おれも最初に高いものを買って後悔した口です。
Q. 渓流ルアーはスプーン・スピナー・ミノーのどれがおすすめですか?
最初はスプーンとスピナーを数個ずつ持っていくのが無難です。スプーンは沈みが速く深場を探れる王道ルアー。スピナーは巻くだけで動くので初心者でも扱いやすい。ミノーは少し慣れてから追加するといいと思います。
Q. 渓流釣りで魚が逃げる原因はなんですか?
川の真ん中を歩くことが多いです。渓流魚は臆病で、足音や気配に敏感です。岸沿いをそっと近づいて、自分の影が水面に落ちないように意識することが大事。この基本を知ってからは釣果が変わりました。
Q. 渓流でPEラインを使ってもいいですか?
使えますが岩場でのラインダメージに注意が必要です。入門段階ではナイロン4〜6lbが扱いやすくておすすめです。渓流はラインロストが多いので、同じラインを複数ストックしておくと安心です。
バイクで渓流釣行に行く話はこちら。
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